10月8日(日)午前5時半過ぎ。
ブルべの当日である。
鹿児島県指宿市のゲストハウスをそっと出る。
外は雨。風も強い。
すでに雨具に身を包んでいる。
出発地である指宿セントラルパークのビジターセンターへ。
主催であるAJ広島のケンセイさんが出迎えてくれた。
この雨の中、600kmの旅を始めようという酔狂な5人が雨具姿でスタンバっていた。
わしを除く勇者たち。右端はご存じこなきさん |
きんたチャリさんは足元がサンダル。
雨がひどいと、結局濡れちゃうから靴でもサンダルでも変わらないという意見もあろうが。
でも寒くないですか? やっぱり凄いランドヌールだ。
センターの事務所には早朝にもかかわらず、観光協会の職員さんが2人もいらっしゃる。
わざわざ開けていただいたのね。
わしらの奇特な趣味に付き合っていただき、ありがとうございます。
ちゃんと、きのう砂むし温泉を楽しませてもらいましたよ。
西郷さんが見守る |
ケンセイさんが手短にブリーフィングを済ませた。
午前6時、時は満ちた。さあ出発だ。
みんな次々に出ていく。
いってらっしゃい |
といっても5台だけだが。
わしはサイコンのセットに手間取り、1、2分遅れで出発した。
雨は今のところ強くはないが、東向きの風が強い。
町はずれに来た。
前方に自転車が見える。
こなきさん、待っていてくれたとは。
有難い。
小倉までの長旅、ともに頑張りましょうぞ。
指宿を離れる。
雨が強まってきた。
幸いにも若干の追い風。
しんどいが頑張るしかない。
錦江湾の西岸を鹿児島に向かって走る。
車の通行量はそこまでではない。
道端に茶色い塊が見える。
街路樹のフェニックスのでっかい枯葉が強風で飛ばされている。
しまなみ海道の瀬戸田界隈で見かけるアレね。
南国風情なのかもだが、豪雨に打たれている身にはそんなものを感じる余裕はない。
国道226号を機械になってひたすら走る。
いつの間にか、こなきさんと別れていた。
左手に墓があった。
沖縄で見かけるような一族が合葬される立派な墓地である。
鹿児島の周辺でも同じような慣習があるのだな。
海岸沿いの道を走っていると、次第に家屋が増え、街に近づいてきた。
鹿児島の市街地だ。
4車線の大きな道になる。
モンベルのゴアレインジャケットは水滴をコロコロとはじいている。
テムレスもいい仕事をしている。
雨の中でもこれなら我慢できる。
荒天下、機械のように無心になって走る。
無心になって…。
…
ふと気づく。
eTrexの地図からピンク色のガイドが消えている。
あかん、コースアウトじゃん!
無心になりすぎてGPSの地図をチェックするのを忘れていた。
歩道に入って、来た道に戻る。
と、向こうから同じような格好をしたブルべな人が一人。
こなきさん、あんたもコースアウトかい!
互いに苦笑しながらコースを戻る。
2キロほど戻って、ようやく分岐点にたどり着いた。
そっか、川沿いの道へ左折しないといけなかったのね。
余計な時間を使ってしまった。
鹿児島市街を抜ける道はややこしい。
雨はますます激しくなる。
こなきさんと郊外の道を淡々と進んでいく。
上り坂が始まる。
それほどきつい坂でないのが救いだ。
薩摩半島を鹿児島市側から西岸の東シナ海側に越えていく。
頂上近く。
工事で片側通行になっていた。
信号待ちで、こなきさんだけでなく、ほかの2人のランドヌールもそろった。
きんたチャリさんは一人は先行しているはず。
今回の旅で残りの4人が最初で最後そろった瞬間だった。
声を掛け合ったか、掛けなかったか。
雨でそれどころじゃなかったか。
標高200メートルにも満たない峠を越える。
鹿児島県内はおりしも国体が開かれており、各地が試合会場や練習会場になっていた。
卓球だったり、ボクシングだったり、バレーボールだったり。
街角のいたるところに幟がはためいていた。
相変わらず雨は降り続いている。
雨具の撥水機能はとうの昔にお亡くなりになっている。
テムレスも手袋の中で水がたっぷんたっぷんしている。
毛細管現象で手首から水が入り込んだのか。
こうなると時折、手袋を逆さにして水を排出するしかない。
防水という概念は大雨に敗北してしまった。
こ道橋を通って国道3号線に合流する。
まもなく海が近づいてきた。
山を越えて東シナ海側に出たのだ。
サッカーや野球などスポーツの強豪として有名な神村学園の前を通る。
フェンスには、活躍する出身選手たちの横断幕がこれでもかと掲示され、実ににぎやかだ。
こんなとこにあったのね。
もちろん大雨の中なので、写真は撮っていない。
いちき串木野市から小さな峠を越えて、薩摩川内市に入る。
午前10時半、走り始めて90km。
そろそろ小腹が減ってきた。
左手にセブンがある。補給しよう。
軒先を借り、こなきさんと休憩する。
セブンで休憩 |
雨は降り続いているが、テムレスをやめて普通の指切りグローブにした。
どうせ濡れるのだ。
手は白くふやけていた。
15分休んで再び走り出す。
市街地に入る。
国道沿いは店舗が多く、道の両側の歩道部分にアーケードが架かっている。
シャッターを下ろした店も多いようだが。
中心部を抜けると、ロードサイド店が増え、そして見つけたのがこの店。
「讃岐」釜揚げうどんを掲げているのに「伊予製麺」とは…。
雨の中、さらにもやもやとしたものを感じたのであった。
伊予製麺さんのHPから |
ちなみに画像は伊予製麺さんのHPからね。
鹿児島だけでなく、北海道などにも展開しているようだ。
当地のみなさまはきっとそんな細かいことは気にしないのだろう。
薩摩川内の市街地を過ぎると、国道は海沿いを北上する。
左手に雨にけぶった東シナ海が広がる。
海も空もどんよりと灰色に沈んでいる。
晴れていたら絶景なのだろうが。
間もなく114kmのフォトチェックである。
派手にミスコースしているので、4kmは余分に走っている。
EDGE840の距離表示から4を引かないといけないのが、地味に脳のリソースを消費する。
12時7分、フォトチェック1の牛ノ浜駅に到着した。
時速15㎞ペースで計算した想定クローズが13時36分。
牛ノ浜駅に到着! |
1時間半の貯金ができたことになる。
大雨が響いて、思ったほどペースが上がらない。
笑顔の絶えないブルべです |
きんたチャリさんはちょっと前に通過したらしい。
今回有難かったのが、ケンセイ号で荷物をゴールまで運んでいただいたこと。
ネコヤマさんで送ろうかなと思っていただけに非常に助かった。
前日は山口県からクルマで鹿児島入り。
当日もやはりクルマで鹿児島から小倉へ。
自転車でも大変だが、クルマでも長距離ドライブはしんどい。
本当にお疲れ様でした。
びしょ濡れおぢさん |
まもなく、こなきさんも到着した。
雨の中でパックになって走ろうとすると後輪がはねた水が直撃し、走りにくい。
なので序盤は各自のペースで走っていたのだ。
自販機でドリンクを買う。
雨でも喉はかわく。
エールを交わして走り出したのだった。
つづく
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