2019年7月25日木曜日

BRM615広島400km 徳山・竹田津 その4 千畳敷は四畳半編

午後1時前、105キロ地点のセブンイレブン長門東深川下郷店に到着。
PCではないが、腹も減ったし、補給したい。
相変わらず雨は続くし、少し休みたい。
サングラスはレンズの下半分に雨滴がぷるぷるとたまって見えにくい。
水が滴るオークリー


ゴアのレインジャケットも撥水機能を失って、ぐっしょりと重い。
こまめにメンテしているのだけど、この雨にはかなわない。
軒先にお邪魔します

午後1時なので出発から6時間。
それで105キロ地点ということは、貯金は約1時間。
なかなか稼げないなあ。
手早く済まさないと。
ということでカレーをいただく。
カレーは飲み物なので、するすると胃の中に流し込まれていく。
カレーいいね!
2食連続カレー


コンビニの軒先から見上げる空は、分厚い雲に覆われている。
雨がやむ兆しも相変わらずない。
陰鬱なる空


日本海に近づいてきたせいか、風も強くなってきたようだ。
陰鬱な気分になりそうだけど、おなかが満たされると少しはやる気がわく。


さ、行きますか。
20分ほどで休憩を切り上げ、雨中へ走りだす。


西へ。
次の目的地である千畳敷を目指す。
まもなく右手に日本海が広がった。
鈍色の空に、黒々とした鉛色の海。
白い波が激しく海岸に打ち寄せる。
モノクロの世界。
まるで冬の海だ。


海を渡る風が荒々しく暴れ、わしらの自転車を揺さぶる。
ハンドルを取られないよう握り、前をしっかりと見据えてペダルを回す。
風雨がわしの体を激しく叩く。
感受性を心の底に封じ込め、黙々と進む。


ようやく海岸線から離れることができた。
軽いアップダウンをこなす。
長門市郊外の田園地帯に入る。
天体観測ドームのある日置小学校の角を右折する。


眼前に広がる山塊。
中腹から上は雲に隠れて見えない。
あの雲の中、千畳敷が待っている


田んぼの中を突っ切ると、上り坂が始まる。
上るにつれて斜度が増してくる。
右折する。
さらに斜度が増す。
ここか。ここなのか。
噂に聞いた激坂は。


斜度を確認しようと、520を見る。
「斜度4%」。ヲイ!違うやろ!
どう見ても10%以上あるやろ!
ちゃんと仕事してよ!
もしかして「こんな坂、たいしたことないよ」って、励ましてくれているのかも。


もちろんギアは34Tに落としている。
ケーキさんはダンシングをして懸命に上っているがしんどそう。
そりゃ今回は28Tのビチュー君だもんね。
車体は軽いが、ギアは重い。
ついに自転車を下りて押し歩きを始めた。


わしはなんとか頑張っているけど、いやほんまにしんどい。
シッティングでギシギシとペダルを踏んで上るしかない。
時速4、5キロ。
押し歩きよりわずかに速いか。
ずるずると上る。
どれだけ進んだろうか。
ちょっとだけ斜度がゆるくなった。
それでもしんどいのには変わりないが。


高度を上げるにつれて、周囲に霧が立ち込めてきた。
進行方向、もう真っ白。
霧の中に溶け込んでまったく見えない。
道路に沿って進むしかない。


じわじわと上る。
右手上方からブオンブオンという鈍い音が響いてきた。
進むにつれて次第に音が大きくなる。
ここを走ったことは2回目だから分かる。
風力発電の風車の羽根が風を切る音だ。


だが振り仰いでみても、ミルク色の霧があるだけで何も見えない。
知っているから大丈夫だが、初めてだと怖いだろうな。


稜線沿いに出た。
風車の風切り音は次第に霧の向こうに消えていく。
風が強まる。
相変わらず周囲は霧。
ミルク色に溶ける

ほぼほぼホワイトアウト。
視界は10メートルぐらい?
周囲が雪だったら空間識失調になるかもしれん。
まあアスファルトの路面が見えるので大丈夫だけど。
本来ならここまで上がると日本海が見えるはずだが、まったく見えない。


「何これ。せっかく千畳敷に行っても、四畳半しか見えんじゃん」
と軽口を叩くと、ケーキさん「ウマイ!」とおだててくれる。
なにそれ、ちょっといい気分になっちゃったぞ、おじさんは。


相変わらずの五里霧中の道。
左折する。
そろそろピークだね。
と、霧の中から合図を送る人影が。
ケンセーさん、マロンパパさん!
雨なのでトイレに雨宿りする。
119キロ地点、PC2の千畳敷である。


到着は14時26分。
一応関係ないけど、貯金は30分に減った。
上り坂だったからね~。
てか、山頂にPC持ってくるのって結構厳しいよね。
下りで挽回できないから。


で、さっそく先ほどの「四畳半」ネタをふる。
お二人に気持ちいぐらいにウケて、申し訳ないぐらい
やったーウケたぁ(撮影・AJ広島のゆかいな仲間たち)

いやいやいや。
思わずニヤニヤする。
ケンセーさんにチェックを受ける(撮影・AJ広島のゆかいな仲間たち)


上まで上ると、fuk@さんがお出迎え。
こんな天候なのにレストハウスでソフトクリーム食べていった強者がいるらしい。
全然見えない。てか寒い


ほんとはこんな素敵な景色なんですけどね~。
2018年撮影


ま、お天道様にはかないませんわ。
相変わらず周囲は霧の中。
3人に別れを告げて走り始める。


すぐにには下山せず、しばし急坂を下ったり、上ったり。
若干、霧が薄れてきたか。
しばらく行くと、今回のもう一つのビュースポット「東後畑の棚田」だ。
絶景、かな?

低く垂れ下がる雨雲。
棚田の向こうにどんよりとした日本海。
雲やら霧やらかかって若干だけど、見えにくいが。
晴れた夕刻はきっといい景色だろうて。
はぁああ。
ふと振り返ると、ため池がある。
「深田のため池」って名前らしい。
いやいや「深いため息でしょ」と突っ込んだら、ケーキさんに「きょうは冴えてますねえ」とおほめいただいた。
いや、どうもありがとうございます。
さ、行きますか。

つづく

2019年7月15日月曜日

BRM615広島400km 徳山・竹田津 その3 嵐の中で輝いて編

午前9時55分、52キロ地点のPC1ローソン山口黒川店に到着した。
体はぐっしょり。
雨中のオアシス

締め切りが10時36分なので貯金はわずか41分。
山口県内のPCが通過チェックになったとはいえ、貯金少ないね。
雨で走りが重いのと、出発時に時間を食ったせいだな。
おお、イートインがあるのか


たちまち冷えた体を温めたい。
ちょっと早いが、店内のイートインでカレーヌードルをいただく。
うむ。間違いない。
体に火が入った。
いただきます♪


行くか。
あ、もちろんイートインの椅子はタオルで拭いて出ましたよ。
お疲れ~

撮る人を撮る!(撮影・AJ広島のゆかいな仲間たち)


店外に出ると、K代表がちょうど滑り込んできた。
互いに撮影しあって、エールを交わし、走りだす。
さて、次なる目的地はフォトチェックの別府弁天池。
約30キロ先だ。

平川から小郡方面へ。
雨の県道は車が多い、
大体がスペースを開けて抜かしてくれる。
が、1台のワゴン車がわしらの右横すれすれに抜かしていく。
危ないなあ。
こんな車ばかりじゃないはずだけど、いらっとする。


しばらく走ると、椹野川がゆるやかな流れが右手に見えるようになる。
二段階右折して、橋を渡る。
国道9号を越え、県道小郡三隅線に入る。
美祢市美東町への緩やかな上りが始まる。


この道では、大型トラックがすれすれに抜かしていった。
またまた肝を冷やす。
山口のドライバーは自転車に優しくないんかのう。
降り続く雨とも相まって、気分が下がる。
まあ、今回の400キロで車にいらっとしたのは、この2回だけ。
雨だったので、ドライバーも見えにくかったのかな。


標高135メートルの二本木峠をさくっと越えて、美祢市へ。
先ほどより雨が強くなってきた。
美東からは北西方向に進むため、逆風になるというのもある。
好天だったら、非常に走りやすい道なのだがががが。


秋芳の街中を抜け、厚東川沿いのゆるやかな道を上流に進む。
堰から水が勢いよく流れ出している。
堰の止水部の水面が、雨で白くけぶっている。
左右に秋吉台東の台と西の台があるのだが、山肌は霧に隠れて見えない。


目の前を横切るように長い高架がある。
西の台の採石場から長門市までを結ぶ全長17キロのベルトコンベアーだ。
下をくぐる。


路面は車の轍部分に水がたまっている。
路肩と水たまりのわずかな間を縫うように走っていく。
路肩がうねっている場所もあるので、気が抜けない。


弁天池の案内看板が見えた。
集落の中を抜けると、駐車場があった。
観光バスが止まっていて、雨にもかかわらず、結構にぎわっている。
にぎわう弁天池


わしらも自転車を止めて、トイレで一息。
体が冷えるので、小便が若干近い。
で、弁天池ってどこだったっけ?
周囲を見回す。
湧水を利用したニジマスの釣り堀がある。
釣り堀

どうやら奥のほうがそれらしい。
はるか昔に来たことはあるのだが、さすがに忘れているな。


店舗の廃墟の横の小道を抜けていくと、ありました。
弁天池が。
84.2キロ地点、時刻は午前11時49分。
水をたたえて


どんよりとした曇天にもかかわらず、翡翠色の水をたたえている。
雨に濡れた木々の葉はしっとりとした風情で、柔らかく緑色に浮かび上がる。
美しい。
しっとりと

晴天ならばさぞや。
とも思うが、雨天には雨天の良さがある。


で、そんな風景をバックに、フォトチェックの写真がこれですか (-_-;)
カメラを向けられるとついシェーをしてしまう昭和40年代生まれの悲しさよ。
そのポーズですかい!


さて、ここで今回のわしの装備をメモしておく。
自転車はおなじみウノさん。
34Tのスプロケを備えたアルテR8000組みの貧脚仕様である。


ハンドルにモンベルの定番品のフロントバッグを装着。
シャワーキャップをかぶせて防水したのだが、この大雨では力不足だった。
サドルバッグはオストリッチ。
少々の雨なら大丈夫だが完全防水じゃないこともあり、中身が濡れてしまった。
付属のインナーバッグは使いやすいのだけど、防水バッグにすべきだった。
これは仕様を分かっていながら、使用法を間違えたわしのミス。
しょうがない。


雨具は上から下まで安心のモンベルで。
上はブルベエ御用達のサイクルレインジャケット。
下がモンベルのストレッチレインパンツ。
生地が伸び縮みするので、ペダリング時にゴアよりもガサガサしないのがいい。
手袋はテムレス。
これも装着法を間違えて、手袋の中が水没するという事態に。
道具は正しく使わないと力を発揮しないのだ。
ジャージは上が薄手の長袖。
インナーがジオラインLW。
下はビブショーツに、ジオラインのレッグカバー。
シリコンストッパーは折り返して、肌に直接触れないようにした。
レインシューズカバーの下には、ポリエチレンの使い捨てカバーを装着。
足首をテープで巻いて止めた。
これはほぼ完璧で、日中降り続いた雨を防いでくれた。
汗が抜けないので湿気るけど、シューズが水浸しになるあの不快感はなかった。


ライトは猫目さんの1700を主力に、ハブ軸に300、手元に300の3灯態勢。
400キロなら一晩なのでこれでちょうどよかった。
ひとまずはこんなところで。


さて、弁天池でチェックを済ませたわしら。
再び走り出す。


風が強まってきた。
時折、呼吸するかのように強くなる。
木々も風の呼吸に合わせ、右に左に大きく体を揺らす。


国道316号に合流する。
長門へ向けて、ゆるやかな上りが続く。
路傍でパンク修理をしているランドヌールが。
K代表!
雨の日のパンク修理は大変だ。
合図を送って通過する。


この辺りだったと思うが、MTBの二人組とすれ違う。
エールを送る。
雨なのにようやるよと思ったが、お互い様か。


のろのろと走れば、標高213メートルの大峠に。
トンネルに入る。
おおおおお。
雨が降っていない!
当たり前だけど、なんとありがたいことか。
ああこのまま、ずっとトンネルのままでいい。
トンネルのままがいい。


しかし蜜月は長くは続かないのが、世の道理。
トンネルを抜ける。
ぶわっ。
風と雨がぶつかってきた。
雨具を着ているのに、体中に雨粒が突き刺さる。
雨粒が痛い。
耐える。
耐えるしかない。
もう逃げ出せないし。
体を小さくする。
少しでも雨粒が当たらないように。
バチバチと雨粒が当たる。
堪忍してくれよ。


下り基調の道は、時折トンネルが表れる。
トンネルがこれほどありがたいものか。
しかし、それも尽きる。

長門市へ向けてのゆるやかな下りが続く。
雨と風に向かって、進んでいく。

さっきから手袋の中がちゃぷちゃぷするのが気になる。
せっかくテムレス着けているのになぜ。
この着け方はやめようね
テムレスの手首部分を雨具の上に出していたのだ。
なので雨具を伝って、水が手袋の中に入り込んだのだ。
テムレスを外して、逆さにすると水が落ちる。
ありゃりゃ。
今度は雨具の袖でテムレスをカバーするように着ける。
これ以降、手の中がちゃぷちゃぷしなくなった。
いい道具を使っていても。運用を間違えたらこんなものだ。

湯本温泉を過ぎる。
立派な温泉旅館が左右に立ち並ぶ。
ここで日ロ首脳会談があったよなあ。かつて。
プーチンが遅刻してきたよなあ。


長門へ向かう。
風雨は激しさを増している。
右手に繁盛してるげなラーメン店が見えた。
以前から気になっている店だ。
寄りたい気持ちはあるが、まず貯金マージンがない。
それにずぶ濡れのわしらがラーメン店に入れるはずもない。
諦観の念とともに通り過ぎる。


昼時。
ケーキさんが「どっかで休めませんかねえ」と尋ねる。
が、びっちゃこのわしらが営業中の店舗の中に、のこのこと入れようか。
やはり失礼に当たるだろう。


なのでコンビニに自主的ピットインすることに。
ここなら雨具でも許してくれますよね。
午後1時前、105キロ地点のセブンイレブン長門東深川下郷店に到着したのだった。
どんより。雨もやまない

つづく