2022年3月4日金曜日

さよなら、モコ


  わが家の飼い犬が死んだ。13歳だった。

 チワワとトイプードルの親を持つ雌だった。腎臓を患って、次第に食欲がなくなり、歩くのもおぼつかなくなってきた。2月中旬の朝、妻から涙声で電話があった。点滴を打っていたが意識がなくなり、苦しそうに浅い呼吸を繰り返しているという。「よく頑張ったよね。ええ子じゃった」。安楽死を決めた。



 夕方、自宅に戻った。通っていた動物病院に連れて行った。別れを告げると、最後まで面倒を見てくれた妻と息子に見守られながら静かに息を引き取った。月のきれいな寒い夜だった。



 ペットフード協会の2021年の調査によると飼育されている猫の平均寿命は15.66歳、犬は14.65歳と、統計を取り始めた2010年以来、最長だったという。うちの犬も平均には届かなかったが、頑張って長生きしてくれたと思う。


 全国の猫の飼育数は約894万6千匹、犬が約710万6千匹。ほどんどが室内飼いで、もはや家族の一員だ。ペットといわずに伴侶としての動物「コンパニオンアニマル」と呼ぶほうがしっくりくる。同調査でも、ペットを「生活に喜びを与えてくれる存在」として捉える人が多いという。コロナ禍で、自宅での時間が増え、その傾向は一段と強くなっているようだ。




 確かに心当たりばかりだ。深夜勤から帰宅したら、真っ暗な玄関で尻尾を振って出迎えてくれた。気持ちが沈んでいる時にも、暖かな毛をなでていると心が安らいだ。単身赴任になってからも月に一度帰省したら、いつも律義に出迎えてくれた。小さな体で大きなものを与えてくれた。




 いつの日か、ぼくもそちらに行く。君がぴょんぴょん跳ね、喜んで迎えてくれるのであれば、それもまんざらではないと思える。ありがとう。そして、おやすみ、モコ。