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2017年6月9日金曜日

BRM503広島 須波・太平洋600キロ その10(完)

492キロ地点、PC7ローソン菊間町店だ。
通過時刻は午後3時32分。
締め切りの3時48分まで、わずか16分。
ギリギリだが間に合った。
まだ旅を続けられる。

着いた時にはまだほかのランドヌールがいたのだけど、ざるそばを食べ終わる頃には、わしたちだけになった。
走り出す。
この時点で午後3時50分。
ついに貯金はなくなった。
退路は断たれた。

だが、時速15キロのブルべペースで考えた場合だ。
残りの100キロちょっとは、ほぼ平坦。
遅くても時速20キロ前後で走れば、ゴール時刻に間に合うはずだ。
大丈夫。間に合う。
ケーキさんは貯金ゼロという事態に相当動揺していたようだ。
だが、ここであきらめても三原まで戻ることは変わらない。
ならば前に進むしかないではないか。
ペダルを回すしかないではないか。
あ、今回のルートね。

国道196号を再び走り始める。
できれば時速20キロ以上で進みたいのだが、ケーキさんのペースが上がらない。
相当参っているようだ。

OK、なら時速20キロで行きましょう。
このペースなら付いてこれますね。
しんどいだろうが、ここは頑張ってもらわんと。
今思えば、この時のケーキさん、昨年のわしの初600の時と全く同じだった。
あの時のわしは最後の100キロ、ほぼ20キロぐらいしか出せなかった。
脚が完全に売り切れていたのだ。
ガチオ君に「時速20キロなら間に合います」と励ましてもらいながら、走ったのだった。
ケーキさんは去年のわしだったのだ。

脚をゆるめる。
時速20キロの定速走行を心掛ける。付かず離れず。
今治までの約30分間、ほぼ一定の速度を保って走っていた。
我慢の時間。
だがおかげで今治に着く前には15分ぐらいの貯金ができた。
おおっと、眠気が襲ってきた。
思い切って休みましょう!

公園が見えた。
ベンチもある。
10分、休みましょう。

人は簡単に気を失える
横になる。
意識が飛ぶ。
・・・・
・・・・
10分のアラームが鳴る前に目が覚めた。
すっきりした。
休みすぎると身体が固まる。
休みはほどほどにね。

再び走り出す。
今治だ。
コンビニがあった。
ケーキさんが手洗いに行くというので止まる。
正直、コンビニストップはしたくなかったがやむを得ない。
待つ時間が正直もどかしかった。
今治らしく、自転車スタンドを完備したサークルKだったかな。

走り出す。
来島海峡大橋へのアプローチが始まる。
おお、ようやく戻ってきたよ。しまなみ海道に。
来島海峡大橋来た!
午後5時。
ゴールまであと6時間。
積算距離は515キロ。
誤差を省けば残り90キロ。
時速15キロなら間に合う。
トラブルさえなければだが。

太陽が高度を下げてきた。
日差しが柔らかくなる。
瀬戸内海がまぶしく光る。

日が落ちてきた
夕方だけど、多くの自転車や歩行者とすれ違う。
しまなみ海道の橋の中で、来島海峡大橋はもっとも四国寄りだからね。
今から今治へ向かうか、戻るかなのだろう。
わしたちはその流れに逆らうようにして、70キロ先の尾道を目指す。

長いのう
来島海峡大橋を渡って大島へ。
島を横断するので、結構疲れる。
往路では感じなかった坂も、今はしっかりと感じ取れる。

伯方・大島大橋が近づいてきた。

午後6時を過ぎた。
橋を渡る。
夕暮れの風景を撮影する姿も。

夕暮れはフォトジェニックだよね
伯方島に渡る。
しまなみ海道はずいぶんと渋滞しているようだ。

渋滞20キロ!マジか
大三島橋を渡る。

大三島橋を渡る
日没か。
多々羅大橋の手前で一息入れる。
補給食を食べる。
橋の上に車が渋滞している

橋の上は大渋滞で、ヘッドライトやリアライトの明かりが列のように連なっている。
こんなしまなみ海道初めて見た。
さすがGWだ。

ウノさんもお疲れ
多々羅大橋を渡る。
生口島に入った。
あたりが薄暗くなってきた。

多々羅大橋さらば

2回目のナイトライドだ。
さすがにもうサイクリストの姿もほぼ消えた。
一日で往復するガチ勢が時折いるが、数えるほどだ。

日が完全に落ちた。真っ暗だ。
しまなみ自慢の海沿いの風光明媚なコースもこうなると、単なる周囲が見えない田舎道でしかない。
進むしかない。

ケーキさんの体調が戻ってきたようだ。
日が沈んで気温が低くなってきたからかな。
巡航速度も若干上がる。
EDGEさんの機能に仮想トレーナーというものがある。
わしはその仮想トレーナーさんを時速15キロのペースで走る人として設定している。
ブルべのギリギリ隊の隊長さんね。
隊長と比べて、どれだけ速く走っているかで貯金が分かるというわけだ。

その機能で確認したが、一時はゼロになったリードも、どうやら30分程度まで復活したようだ。
このペースを保てば、なんとかなりそうだ。
生口島から生口橋を渡り、因島へ。
因島の丘を越えたところにあるコンビニに寄る。
ケーキさんは大丈夫そうだったが、わしが補給切れでハンガーノックになりそうだったからだ。

炭水化物を補給すると、少し元気になる。
走る意欲がわく。
プラス思考になる。
逆にエネルギーが足りていないと、マイナス思考になり、否定的なことばかり考えるようになる。
人間ってつくづく現金なものだと思う。
5分ちょっと休んで走り出す。

因島大橋を渡り、向島へ。
向島の町を通り過ぎる。
午後9時を過ぎている。
丘を登って、新尾道大橋にアプローチする。
新尾道大橋は、自転車向きじゃないので緊張する。
ようやく本州に戻ってきた。

残り約20キロ。
午後9時20分。
時速20キロペースで走れているので、トラブルがない限り大丈夫だろう。
9時半、尾道駅の前を通過する。
尾道駅前通過!

あとわずかだ。
もう少しで600キロの旅が終わる。

身体は疲れているのに、心がはやる。
ペダルを回す脚に力が入る。
平均時速のペースがちょっとだけ上がる。

尾道から三原へ。
旧2号線は路肩の舗装が悪くて走りにくい。
だが、ウノさんとのシンクロ率が高まっているわしにとって問題ではない。
わしがウノさんに乗っているのか、わしがウノさんに乗らされているのか。
ウノさんとのかつてない一体感を感じている。
路肩の白線の上を狙って走る。
少しでもずれたら荒れた路面が待ち構えている。
でもウノさんと一体になった、わしにとってはどうということはない。
三原港前を過ぎる。

左手に入り、三原の街中を進む。
この辺で、ミニベロのナギさんと一緒になった。
今回の道程でも何回か一緒になりましたね。
ミニベロで600を走り切るなんてホンマすごい。
真正のヘンタイさんだろう。尊敬する。

ナギさんとつかず離れず。
沼田川を越える。
左折する。

おおおお。
何度か通った須波へのウイニングロード。
それを今走っている。

ここまでくると、もうケーキさん大丈夫ですよね。
自らのことしか考えないエゴイストが、最後の最後に顔を出す。
後ろのことなんか考えずに脚を回す。

ああ、なんて楽しいんだ。
走るって、なんて楽しくて苦しいんだ。

でも、もうすぐ。
もうすぐ、この夢の時間も終わる。
旅は終わる。

右手にローソンが見えた。
ああ、旅が終わる。
ケーキさんとともにコンビニに滑り込む。
いつものアレを買う。
そして会計。
レシートに打刻された時刻は、4日午後10時27分。
終わった。
600キロの長い長い旅が。
キューシートでの距離は602.66キロ。
EDGE520Jが示したのは607.6キロ。

締め切り時間まで33分。
まさにギリギリである。
だが成し遂げた。
やり遂げた。
任務遂行。

ケーキさんと先ほど買ったノンアルで乾杯する。
く~~~~~~~~~っ。うまい。
ケーキさんと乾杯!

これぞ、自己満足の味だ。
最高の自己満足。
そしてこの個人的な自己満足を、世界的なサイクリスト団体が「よう走ったのう」と認定してくれるのである。
なんとうれしいことか。
なんとありがたいことか。

ローソンの前には一足先に到着したみなさんが談笑している。
わしらも仲間入りして、ひとしきり会話に花が咲く。
ああ、至福のひと時だ。
福岡からいらしたランドヌーズさんは三原に宿泊し、「明日は大久野島へ行ってウサギを見るんだよ」とおっしゃっている。元気やねえ。
明日も「なんちゃって1200」の後半、BRM505広島 須波・日本海600kmに出走される方もいらっしゃるのだろう。
ちなみにわしたちは明日はともに仕事。ははは。

あとやるべきことはブルべカードを記入して、ポストに投函するだけ。
ま、明日やりますか。

名残惜しいが、みなさんに別れを告げ、駐車場に戻る。
片付けて帰路に付いた。

本当に長くてしんどい600キロだった。
何度も何度もダメかと思った。
でも何とか間に合った。
諦めなくてよかった。
走り続けてよかった。

600キロは昨年のBRM902以来、2回目の完走である。
前回はガチオ君に導いてもらった600キロだった。
今回はケーキさんと一緒に、自分たちの脚で切り開いた600キロだった。
600キロを走り抜いたことには変わりないが、一つ前進できたような気がする。
そう思うことにしよう。

一緒に走ったケーキさん、お疲れさまでした。
そして毎度毎度付き合っていただき、ありがとう。
一人ではない心強さを感じた。
主催のAJ広島のみなさまにも感謝です。
「なんちゃって1200」は当分無理そうですが、四国のハードな山々の一端を堪能することができました。ありがとう。

ちなみにAJ広島のリザルトによると出走した46人中40人が完走。
最速タイムは驚きの25時間17分だそうな。
わしの400より速いよ。
わしの認定タイムは39時間27分。

正真正銘、ギリギリ隊の一員だった。

そして次の旅は、あす6月10日午前8時朝出発の「BRM610広島 岩国・角島400キロ 角島、ヤッパいいよね。 どうか晴れますように!!」だ。
日曜日の天候が極めて心配なのですが、こればっかりは準備を整えて臨むしかない。
祈るしかない。
どうか晴れますように。

おわり。


2017年6月7日水曜日

BRM503広島 須波・太平洋600キロ その9

最大の難関である三つの峠を越えた。
午前11時12分。
430キロ地点、PC7のローソン久万大谷店。
締め切りが11時40分なので、貯金はわずか28分。

間に合ったよ。
が、今は山場を越えた安堵感に包まれよう。
ひとときの満足感に浸ろう。

くつろぎのみなさま。
昼前なので、がっつりと食べる。
和風ボンゴレパスタを食べる。
おやつのカスタードシューも食べる。
食後のコーヒーもいただく。
同じギリギリ隊の皆さまと健闘をたたえ合う。
みんな一山越えて、解放された表情だ。
この時点で何とかなりそうとの確信を得た。
しかし、それはまだ甘い算段だったことを数時間後に思い知らされるのだが。

あと越えるべき峠は一つだけ。
このPCから11キロ先にある三坂峠である。
標高700メートル以上なのでまだ約200メートル以上高度を稼ぐ必要がある。

高原の道をゆく
高原の町だけあって空が広い。
開放的な田園地帯の中を黙々と走って行く。
きつい坂ではない。
ただひたすら長い。
これが四国クオリティ。
先刻、腹いっぱい食べたので睡魔がやってきた。
と、道端にホテル発見。
さっそくチェックインする。
隣にはトイレまである最高の環境。
ちょっと眠りますか。
高級ホテルに投宿。

zzz。
10分ほど休んだかな。

再び上り始める。
峠は自動車用のバイパスができているらしく、自転車は旧道へと回される。
松山まで25キロか。

高いところまで上らんといけんけど、車が少ないのはありがたいな。
標高約720メートル、三坂峠に着いた。
ようやく三坂峠のピーク。

これで今回の峠タスクはすべてコンプリート。
あとは平地基調だ。
もう楽なはずだ。
と思っていました。この時は。
はるか眼下に松山市郊外の田園風景が広がる。
実にいい眺めじゃないか。

さわやかな風景。
キラキラの木漏れ日。
鮮やかに輝く新緑。
吹き渡る薫風。
世界がわしらの健闘を寿いでいる。

ここから今回のブルべ最大の標高差を下るダウンヒルが始まる。
松山市の郊外まで約700メートルの下りだ。
だが、下りても下りても坂は終わらない。
風がそこそこ強いので気を使う。
路面がドライなのが唯一の救いである。
道は結構荒れている。

バイパスと合流してからは車の交通量も増えた。
後ろをうかがいながら、慎重に下っていく。
抜いていく車が数知れず。

まだか。
まだか。
そればかり考えて、ブレーキレバーを握りしめている。
周囲の風景で、高度が下がっているのがわかるのだけど、でも終わらない。
ま、標高差700メートルの坂なんて、そんなにあるものではない。
うちの近くではええとこ300メートルだもんね。
てことは湯来の天上山並みか。
長いわけだよ。

延々20分下って、ようやく下界に下りた。
もう下りはいい。
できるならずっと上っていたい。
疲れた。

ケーキさんも下りてきた。
よかった。二人とも無事故で。

さ、行きましょう。
交差点を右折し、松山の市街地に向かっていく。
だんだん建物が増えていく。
車も増えていく。
信号も増えていく。
今日4日はゴールデンウイークのど真ん中。
車も多いわけだ。

松山市街地に入ると、気温も徐々に上がり始めてきた。
さっきまでの爽やかな高原地帯とえらい違いである。
三坂峠では18度ぐらいだったのに、25度を超えている。
季節が一つ違う。もう夏だわ。
見覚えのある場所を通る。
あ、ここ松山城下の公園だわ。

松山城下に到着!
交通量の多い道をのろのろと進む。
200キロブルべ翌日の松山観光で走った風景の中を行く。
しかし暑い。
長袖ジャージのままだからさもあらん。
市街地を抜け、郊外に差し掛かってきた。
左手にローソンが。
辛抱たまらん。ちょっと休もう。

474キロ地点。
時刻は午後2時過ぎ。
次のPC7まで約20キロで、1時間48分あるから間に合うだろう。
ガリガリ君で脳がキーンと冷える。
ありがとうガリガリ君。
ナイスアシストだ。

目が血走っておる。後ろに魂が抜かれた人が
ここで長袖ジャージを半袖ジャージに着替えた。
少しは楽になるだろう。
2時20分ごろに出発した。
次のPCまで残り1時間半だ。

国道196号を今治へ向かって北上していく。
田園地帯のバイパスから、海岸沿いに出る。
スピードは20キロ台前半。
決して速くない。
だが、後ろに付くケーキさんがじわじわと遅れてくる。
だいぶダメージが蓄積されているようだ。
しかし進まないと終わらない。
いくしかない。

左手に瀬戸内海が広がる。
海岸沿いは風もそこそこあった気がする。
風向を覚えていないので、ひどい逆風ではなかったのだろう。
車の通行量は相変わらず多い。
今治へのブルーライン表示を頼りにペダルを回す。
道の駅はパス。
なかなか進まない。
次のPCが遠い。
EDGEの距離表示をにらみながら脚を回す。
まだか。
まだか。

古い街並みに入る。
右手にサークルK。
ここじゃない。
左手奥にローソンの看板が。
492キロ地点、PC7ローソン菊間町店だ。
店に滑り込む。
ざるそば、お茶、ヨーグルトドリンクを買って支払い。
午後3時32分。
締め切りの3時48分まで、わずか16分。
よかった。
ギリギリだが、なんとか間に合った。
まだ旅を続けられる。


つづく。