2018年12月29日土曜日

広島一周ブルベBRM1027広島600kmはDNF その7 夜明けのスキャット編 

ルール―ルール―♪
286.59キロ地点、PC3のセブンイレブン千代田インター店。
28日午前1時前、わしらはDNFを決断した。

大先生に撮ってもらった珠玉の一枚をSNSに上げてDNFをご報告。
お叫びのデュエット

さあ、これからが撤退戦の始まりだ。
たちまち、温かいおかゆをいただく。
ブルベの朝食には欠かせない。ってか夜食だけど。
沈んだ心と疲れ切った体に少しだけ明かりが差す。

K大先生に道中拾った輪行袋と手袋を手渡す。
その後、無事に群馬県から来たランドヌールさんの元に戻ったらしい。
よかった、よかった。
わしらの殿軍としての役目もここで終わりだ。
K代表、巡回ありがとうございました。

結局、1時間ほどぐだぐだしたかな。
そしてわしらの撤退戦が始まる。

5月の剣山のように絶望的な状況ではない。
なんといっても、千代田から可部は近い。
20~30キロといったところ。
下り基調だから、わしらの貧脚でも1時間ちょっとで着くだろう。
真夜中だから寒い。
防寒具のダウンベストをジャケットの下に着込む。
これは暖かかった。
汗ばむくらいだった。
早くから着ればよかった。
と思っても後の祭り。
アフターザフェスティバル。

午前1時20分ごろに出発。
深夜の道を可部に向かう。
交差点に止まる。
と、ケーキさんが語りかけてきた。
「すんませんたっかんさん。鍵がない。家に入れない」
????
「車のキーしか持ってきてない。家の鍵は車に置いてきてしまった」
おう?
なんと・・・。
おうううう?
え、となると暖かいお風呂は?オフトゥンは?
ガラガラガラ~(ビジョンが崩れる音)

まあ、ケーキさんを責められないよな~。
わしだって同じことしていたから。
ただ次善の策を講じないといけない。

「可部に代わりのあてはある? 24時間開いているネットカフェとか」
「ないっす」
むむむむむ。
うううん、しょうがない。
目的地を可部から広島市内に変更する。
あ、ここでいう市内って広島市の市街地のことね。
広島市民にとって「市内」とは太田川デルタにある「旧市内」のことなので。
わしらも一応は広島市民なんだけど、市内在住とは認められていないのだ。
ま、市内ならネットカフェとかもあるし、なんとかなるだろ~~。
あてもなく国道261号を南下する。
ここからしばらく緩やかな上り。

真夜中の道を淡々と進む。
進むしかすることがない。

と、右手がなにやらにぎやか。
明るいし、お囃子らしい音楽も聞こえる。
山際にあるこんもりとした木々。
そこが明るく照らされている。
おお、秋祭りの夜神楽だ。

そうここは県北。
安芸神楽の本場じゃないか。
この季節、秋祭りの神楽は夜通しあるのだっけ。
知識では知っていたが、実際に見るのは初めてだ。
寄ってみようかな~とも思ったが、神楽ってたいがい神社の神楽殿か拝殿である。
ほぼ外である。
もちろん寒い。
そして神楽って地元民の楽しみの場である。
そんなところにピチピチタイツのわしらが行っても奇異の目で見られるだけ。
やめとこう。
脳内であっという間に結論が出た。

また進む。
と、この真夜中なのにやけに明るい大きな建物がある。
体育館か?
そしてこの真夜中なのに、家族連れが歩いている。
まじか。ここでも神楽やってるし。
ほんまにどんだけ神楽好きなん、千代田。

ここでも足を止めずに進む。
この真夜中に進む2台の自転車を見たみなさんも、何事かと思ってくれたかな。

しばらくだらだらとした坂を上ると、明神峠。
ぐわーっと、がーっと一気に下る。
がまん、がまん。
ふもとのセブンでいったん止まって、ケーキさんと合流。

飯室から左折し、幕の内トンネルへ。
このへんでシカを目撃した。
この夜2回目の獣との遭遇。
さすが可部だ。

幕の内トンネルは歩道を通った。
歩道が広いのはいいのだが、ところどころ砂が浮いている。
路面も荒れている。
つくったのはいいが、メンテされてないのだな。
人通りが少ないからね~。この辺。

小さな峠を越えると、可部の街中。
ここからちょっと行けば、ケーキ邸なのに。
無理やり入ったら犯罪者扱いされそうなので自粛自粛。

街を抜け、太田川沿いに出る。
川沿いを下っていく。
ケーキさんの通勤ルートである。
わしは淡々と付いていく。

太田川橋を渡る。
ここからは太田川右岸を下っていく。
広島の自転車乗りにとってはお馴染みのコースだ。
ただこの時間に走ることはめったにないが。
千代田では5度ぐらいまで下がっていた気温も、高度を下げるごとにじわじわと上がり、9度ほどになっている。

午前3時ごろ。
高瀬堰を過ぎる。
深夜の高瀬堰

あともう少し。
わしの通勤ルートと合流する。
深夜だから風景は違うが、慣れた道。
抜け殻になったオヤジたちが行く。

そして午前4時。
この日のビバーク地点に到着した。
シャワーを浴び、布団に入ってなんとか仮眠を取れたのだった。
・・・・
・・・・

午前10時半に起床。
いい天気だ。
ほんまならまだサドルの上で四苦八苦しているはずなのに、こんなところで宿泊しているとは。
DNFしてよかった・・・のか。
まあ、いろいろな思いはぐっと飲み込んで生きていこう。

まずははるか三原にデポしてある車をピックアップしないと。
たちまちタリーズで朝食。
ホットドッグとアイスカフェラテ

広島駅から山陽線で三原へ向かう。
疲れているので、よく眠れるわ。
来し方行く末に思いを馳せる

午後1時過ぎ、三原駅に到着。
駅近の老舗ラーメン屋で、珠玉の一杯と餃子をいただく。

うむ。
伝統の一杯

うむ。
餃子とともに。うまい

駅前のローソンで入手したノンアルでお互いに慰労の乾杯。
どうもお世話になりました。
つぎは完走しましょうや。
しみる

うまい

路線バスで須波へ。
バスに揺られて

午後2時半過ぎ、みはらし温泉の真ん前のバス停で降りる。
さよならバス、さよなら、みはらし温泉

駐車場へ。
お、あの色の車は・・。
おお。

受け付けのこなき夫妻じゃ。
完走せんかったけど、ただいま~。
お菓子をいただく。
無事に帰るだけでいいよねえ

DNFされた方や。
行橋のKさん!門司でお会いしましたね(^o^)

完走!された方や。
完走お疲れでした。え、まだ昼間なんですけど(^_^;)

本当にお疲れでした。

ということで、今回の旅は終わり。
車をピックアップして、無事に帰宅したのでした。

厳しいライドでした。
完走はかないませんでしたが、いいチャレンジでした。
AJ広島のみなさまに感謝です。
一緒に走ってくれたケーキさんにも。
コースミスでずいぶん余分に走らせて申し訳ない。
こりずにまたよろしくお願いします。

2019年のブルベの受け付けも始まっていますね。
さあ、次はどこへ走ろうか。

おわり。

2018年12月20日木曜日

広島一周ブルベBRM1027広島600kmはDNF その6 さよなら人類編

やっちまった。
本日2回目のミスコースだ。
静馬商店、とっくに過ぎとるじゃんか。
がくんと力が抜ける。
ああ、またやってしまったのか。


どうやらさっき通り過ぎた集落か。
「すまんケーキさん!通過チェック取り過ぎた!」
冷え込む中国山地の山中。
オヤジの声が悲しげに響き渡る。
うううう。なんてこった。


「まだ間に合うかもしれないです。戻りましょう」とケーキさん。
崩れ落ちそうになる心が、その一言で持ち直した。
「行きますか」
きびすを返し、今下ってきた林道に戻る。
つづら折りの道を上る。
路面に見覚えのある木切れが落ちている。
小さな峠を越え、しばし下って林道を抜けた。
集落が見えた。
三差路を右手に入る。
さっきはここを見逃していた。


自販機の明かりが見える。
そうここだったのだ。
時刻は午後10時。
242キロ地点の通過チェック静馬商店に到着した。
時速15キロで計算した想定締め切り時刻は午後10時10分。
もちろん通過チェックなので締め切りは設定されていないが。
この時点での貯金は10分か。
厳しい。実に。厳しい。


たちまち撮影。
ここはまじめに撮ったよ。


温かい缶コーヒーを1本飲んで、再び走り出す。
ともかく進むしかない。
ケーキさんも撮影

ログによると、このミスで6キロほど余分に走り、貴重な30分間を浪費していた。
せっかく試走したのに、肝心の店舗まで確認していなかった。
わしの二重の不手際だ。


見覚えのある道を走り出す。
お社の前を過ぎて左折。
林道へ。
昼間の映像です。お納めください(下見時)

一度走った道は、短く感じるのが幸い。
林道を上る。
ん。
右目の視界に違和感のあるものが飛び込んだ。
黒っぽい物体に鮮やかに浮かび上がる白い文字。
なんじゃろ。
自転車を止めて確認する。
枯れ葉が降り積もる路肩にそれはあった。
黒い円筒形のスタッフザックと「TIOGA(GIANTだったか?)」の白抜きのゴシック文字。
そうブルベエ御用達アイテム、輪行袋ですわ。
こんな山奥の道に落としていくとは、先行するブルベエさんの誰かに違いない。
拾い上げる。
「よく見つけましたねえ」とケーキさんが驚いていたけど、君も手袋みつけたじゃないか。
われらギリギリ隊、殿軍としての務めは十二分に果たしたな。


輪行袋をサドルバッグに突っ込み、再スタート。
先ほどの引き返した地点を過ぎる。
しばらく走ると国道186号に合流した。
おなじみドライブインがある交差点ね。


国道186号を加計方面へ。
ああ、このまま走ると広島だよね~。


左折して県道40号線の石見街道へ。
道路標識が闇に浮かぶ。
直進すると「可部」と言っておる。
え、可部?
可部といえばケーキさんの住まう場所。
ほんまに行けるの?


疑問に思いつつも、そのまま直進。
思えば、これが大きなフラグだったのか…


なだらかな山里を行く。
この辺りから霧のような雨が降ってきた。
Volt1700が照らす光芒の中に、水滴が光ってチラチラと舞う。
がっつりとした雨ではないが、気になってきた。
上半身はジャケットを着ているが、下はビブにレッグウオーマー。
レインパンツをはくか。
どこぞの店舗の駐車場に滑り込み、雨具を着込む。


石見街道を離れ、大朝方面へ。
山越えが始まる。
八幡高原周辺も寒かったが、標高を上げていくのでこの辺も寒い。
ただ上りなのが救い。


ようやくピークへ。
大朝方面への下りが始まる。
そう。この下りがまた長く、そして寒かった。
大谷川沿いを下っていく。
途中、工事区間があり、信号で強制ストップに。
そして見覚えのある管理釣り場の横を過ぎる。
ひたすら我慢の時間だ。
周囲が開けて、だんだん斜度が緩くなる。
ひたすら我慢。
ただただ耐える。


交差点で自転車を止めてケーキさんが追いつくのを待つ。
お、きたな。


大朝の町の手前で右折する。
再びゆるやかな上りが始まる。
先日、下見に来たときは、田原温泉にすぐ到着したのだけど自転車ではそうはいかない。
再び我慢の時間。
下って我慢。上って我慢。
この時間、走り続けることはいずれにせよ我慢しかない。
そろそろ眠気も忍び寄ってくる。
しかし、晩秋の中国山地の山の中、休めるところなんぞない。
ひたすら耐えて走るだけだ。


前方に田原温泉の灯りが見えた。
時刻は午後11時半を過ぎている。
古い学校を利用した宿泊施設から暖かそうな灯りが漏れている。
下見の時はここで露天風呂につかってのんびりしたっけなあ。
いまは寒さに震えながら、横目で通り過ぎるしかない。
さよなら田原温泉。
また来るよ。
昼間の田原温泉。バイクラックもありました(下見時)


民家が尽きる。
両側に山が迫る。
巨大な霊園の入り口を過ぎると、それまで2車線だった道が1車線に絞られる。


峠区間の始まりだ。
と、左手の薮の中で、がさとうごめく獣が。
イノシシだったか、シカだったか。
しかとは記憶にない。


谷沿いの細い山道を下る。
ぐねぐね。
スピードは出せないし、出さない。
慎重に慎重に。


ようやく山道が終わり、山里に出る。
周囲に田畑があり、開けているだけで安心する。
国道433号だ。
3桁とはいえど一応は国道。


ひたすら夜の道を進む。
眠気と寒気。
周囲に休めるところはないし、休んだらタイムアウトは必至だ。
ひたすら進むしかない。


次のPCは286キロ地点だったかな。
余分に走っているので、もうガーミンは286キロ以上を表示している。
仕方ないとはいえ、徒労感が・・


千代田の町が近づいてきた。
高速道路の高架をくぐる。


PCではないが、コンビニがある。
おお、イートインもあるんじゃ。
暖かそうな、非常によさそうな空間じゃな。
PCじゃないのでしょうがなく過ぎるけど。


田舎道なのだが、中国道のICが近いので、この辺は工場が多い。
工場の建物から漏れる灯りが心の支えだ。


ようやく千代田の中心部だ。
信号がある交差点を左折。
見覚えのある風景。
もう少し行くと千代田ICがあり、道の駅がある。
そして左手にコンビニが。
PC3だ。
日付をまたいで10月28日午前0時半過ぎ。
286.59キロ地点、PC3のセブンイレブン千代田インター店に到着したのだった。


店内に入り、買い物をすます。
レシートの打刻時刻を見る。
午前0時35分。
締め切りが午前1時8分なので、貯金はわずか33分しかない。


考える。
これから明け方へ向けて寒さもっと厳しいよね。大丈夫なん?


考える。
貯金30分しかないし。この疲れ具合、眠たさ加減だったら1時間は最低眠らないと。
じゃないとダメでしょ。大丈夫なん?


考える。
三次まではええよ。こっから下り基調だし。
でもその後はどうなん。
東城の山越えだよ。
その後も神石はアップダウン祭りだよ。
わしらの脚力で間に合うん?


考える。
ここ千代田だよね。
ちょろ~~とちいさな峠越えて下れば、可部だよね。
ケーキさんの家があるよね。
ホットな風呂に入って、布団にもぐって人権ある夜を送れるよね。
ケーキさんもええよって言ってくれてるし。
ね、ほんまにええのん?


考える。
仮に三次まで行ったとしようか。
こなき氏みたくコインランドリーで休養して、その後そこで寝込んだらどうなん。
広島まで帰ろうにも芸備線、豪雨被害で止まっているよね。
輪行で帰れないよね。大丈夫なん?


で、ケーキさんはどうなん?
「わしはSRもかかっていないし、たっかんさんに任せます」
ぬ、ぐぐぐぐぐ。
う、ぐぐぐぐぐぐ。


と、こんな真夜中なのに、AJ広島代表のK大先生が見回りにきてくれた。
ほんまにこの人ときたら。
仕事やらなんやらで大変なのに。
なのに、車で回ってくれる。
ほんまにありがたいことじゃのう。


決めた。
ここで終わりにしよう。
DNFだ。
残念だけど。


大先生に伝える。
スマホをいじってこなき氏にも連絡を入れる。


うおおおおおおおおおおおおおおおお。
ま、これが実力よね。
オオオオオオオノオオオオオ!(撮影・K大先生に頼んだ)

是非もなし!

つづく。