2016年6月9日木曜日

石見グランフォンド2016 その6(完)

粕淵を立つ。
そう。ここから本当の闘いが始まるのだ。


今まで得してきた7キロの意味も本当にわかるのだ。
そう、本当に。
粕淵を出て、橋を渡る。
例年なら真っすぐ行くところを右折する。
そう。
あえて遠回りするのだ。
町の中を走る。
そして、昨日下見したあの道を目指すのだ。


だらだらとした上りが続く。
これは地味にきつい。
先に何があるのかを知っているだけに、余計たちが悪い。




粕淵から8キロ。
右手に千福の看板が見えた。




左折する。
おいちゃんがこっちこいと誘導する。
「千原温泉」の方へ進む。


林道湯谷上山線であーる。




沿道の家の縁側から応援の声が飛ぶ。
ありがとうございました!
もうひと踏ん張り頑張ります!



最初にちょっと上って、しばらくは緩やか。
千原温泉への分岐点はもちろん温泉側は選ばない。
きつい左の道を選ぶ。
そしていよいよ核心部だ。
傾斜が増す。
地獄が始まる。
10%を超すという坂が続く。
終わらない。
しんどい。




ギアはインローの34-30Tに落ちたまま。
速度は出せないが、じわじわと上がれる。



這うように上る。
道は荒れているが、速度が極めてゆっくりなので、小石はよけられる。
これが2キロ近く続くんだよ。
勘弁してくれよ。
ケーキさんはダンシングでじわじわと進む。
わしよりも重い28のギアなのにすごいな。
次第に離される。
待って・・・。


這うように上るわしを、もう少し速い人が追い越す。
追いつけない。
女性にも抜かされる。


脚は付きたくない。
頑張る。
時折、押し歩きをしている人もいる。
カーブで休んでいる人もいる。
この激坂を前にした人類にとっては、どちらも正しい選択である。


顔を上げて前を見る。
傾斜は緩むことなく、山肌を龍が天に上るように道が続く。





当然、写真は撮れない。
カメラを手にすると、バランスが崩れる。コケる。
なので、写真は前日撮影のものもあります。


永遠かと思われた時間も、終わるときは来る。
傾斜が緩くなった。
右手に滝が見えた。
下見の通りだ。
ようやく一息つく。
ケーキさんの姿は見えない。


景色が開けた。
十字路を左折する。
油断はできない。
まだ上りは続く。
先刻ほどではないが、相変わらず10%の坂が普通に現れる。




おや、かなり先にケーキさんが見える。
これはもう少し走れば、追いつけるかも。
そんなことを考えながら、進む。


ビキッ!
右足が固まりそうになる。
ゆっくりでも動かそうとするが、固まってしまう。
足が別の意思を持った生き物のように、言うことを聞かない。
やば、つった。
だめだ。このままだと、こける。
左足を外し、足を付く。
道路わきに寄って、休む。
足つりには慎重を期していたつもりだったが、ダメだったか。
お約束の漢方を飲む。
これで少しは足が動くだろう。


走り出す。
なんとか足は回る。
できるだけ足に負担をかけないように回していく。
追いつくのは無理だけど、待たせたら悪いしな。
敗残兵は、ただのたのたと進むだけだ。


おう、三瓶の山塊が見えてきた。
無駄にきれいな、誰もいない展望台を過ぎる。


ここからダウンヒル。
一気に三瓶の懐に飛び込む。
田園の中を突っ切る。


前日の写真です


三叉路を右折する。
いつもの三瓶に上る道に出た。
ちょっと上がると、三瓶温泉への分かれ道で、信号がある。
ケーキさんが待っていた。お待たせ。
ここでうれしいプレゼント。
道案内の人たちが私設エイドを構えていてくれたのだ。
ありがたく、コーラをいただく。うまいなあ。うれしいなあ。
もうちょっと頑張る気力がわきましたよ。


温泉へのきつい坂をケーキさんと二人淡々と上る。
きのう入浴した鶴の湯を横目で見る。
いま入ったら最高に気持ちいいやろな~。
体中塩塩じゃもんなあ。


とも思うけど、先を急ごうか。
消防署の前を過ぎ、国民宿舎の前を過ぎると、信号がある三叉路に。
ようやく一息つける。
森の中の道を抜けて、西の原がキター!






この解放感、素晴らしい。
何回来ても、そのたびに感動する。
しかも毎回、いい天気。
素晴らしい。
なんていいやつなんだ、三瓶。
まあ、坂はえげつないけどな。


自転車を止め、二人で記念撮影。
うおおおおお、やったぜええええええ。


雄叫びを上げるオヤジ二人。
だれだ、双子だなんて言ってるやつはww


だが、もう少しある。
最後の北の原へ上る坂が待っている。
さ、行こう。





今年もこの坂が迎えてくれた。
絶望も希望もなく、ただ足を回すだけ。


足を回せば、前に進む。
坂を上りきれる。
だらだらとした坂が続く。
先が見える坂って本当に意地悪だと思う。
実に疲れる。


でも、この坂も終わりが近づいてきた。
道端のサポートバイクが「もう少しです」と励ましてくれる。
そう、わしも景色を覚えている。あと少しだ。


上りきった!
なんとか。
胸いっぱいの安心を載せて、北の原の三瓶バーガー前の第7CPに滑り込む。
181キロ地点。
時間は午後4時56分ごろ。
調べたら、昨年とほぼ同じだった(^_^;)
結局、7キロ分の貯金は見事にどこかに回収されたのだった。


ケーキさんもまもなく到着。
おやつのヨーグルトをいただく。


喜びのポーズを決めるわしら。




ハルーさんとも合流する。
女性2人も一緒だとは、すごすぎます。


一緒に喜びの舞。何やってんだか。


ウインドブレーカーを羽織って、さあ、下りましょう。




ひたすら重力に身を任せるだけのダウンヒル。
楽しいよねえ。
ただこの日は夕刻から強くなった南風のせいで、気を使った。
暴れる風に負けないようにハンドルをしっかり握る。
それにケーキさんから「ゆっくり行ってください」と念押しされていたし。


慎重に下りていく。
風は強いが、そこまで気温は下がっていない。
位置エネルギーを一気に消費したな。
ダム湖の横を通り、川沿いの快走路を夕暮れの大田へと向かう。




この風景を見ると、「帰ってきた」と思う。
縁もゆかりもない土地だが、この3年間で親しみを持つようになった。
この石見GFがなければ、抱くことのなかった感情だ。





ケーキさんといいペースで走っていく。
街中を抜け、ゴールの久手海水浴場へ向かう。
わしらの後ろに列車ができているみたいだが、もう気にならない。
自分のペースで行けばいいだけだ。
この後に及んで、人の後ろなんていやだろ?




久手海水浴場が近づいた。
あそこを左折すればいいだけだ。




12時間半前に出発した青いゲートをくぐる。
終わった。旅が。
ゴールで到着のサインをする。
完走証の小さなステッカーをもらう。
午後5時50分。
走行距離は202キロ。


会場では神楽が上演されていて、子どもたちがかぶりつきで八岐大蛇の退治シーンを楽しんでいた。


田舎の祭りは神楽に尽きるね!
締めのそうめんをすする。



やりましたね。
勝ち誇る二人のオヤジ。




足をつりながらも、二人で完走するという目的は果たした。
ken2さん抜きでも、やり抜きましたよ。




昨年一緒に走ったウメさんも戻ってきた。
お疲れ様です。




日が沈む。
楽しくつらかった一日が終わる。
本当に一日よく遊んだ。
きょう一日に悔いはない。
いい一日だった。
また明日から頑張ろう。


石見GFを企画、運営したサイクリストビューのみなさま、お世話になりました。
応援してくれた沿道のみなさま、力をいっぱいもらいました。
一緒に走ってくれたみなさま、非常に助かりました。
わしたちの成分の大半は感謝でできています(^.^)


ともあれ、一つの旅は終わった。
まだ道はいたるところにある。
さあ、次はどこへ走ろうか。


おわり。




追伸
帰路、立ち寄った三瓶温泉国民宿舎さんべ荘の露天風呂、最高でした。
ぬるめの源泉かけ流しで、そのまま宿泊したいクオリティでした。
おすすめです!

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