標高1400メートルの山の上に午前1時。
しかも自転車のサドルにまたがっている。
なかなかありえない状況ではないか。
ということでDNF記念にいろいろ写真を撮っちゃうわしら。
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オーノー! |
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こっちもオーノー! |
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峠のトンネル前で |
もともと剣山はフォトチェックの場所だったしね。
間に合わないと分かっていつつ、山頂まで上ってきたのには訳がある。
エスケープルートが山頂からしかないのだ。
決められたルートをそのまま進むか。
それとも国道438号を北方面へ下山するか。
二つに一つ。
ここは人里により近いと思われる北方面一択で。
それでも、ふもとのつるぎ町まで40キロ以上ある。
まじかよ、40キロずっと下り坂ってこと?
気が遠くなる。
その前に下山の準備をしなくては。
ピークからちょっと下ったところに立体駐車場があったので、そこに避難する。
風は通るが、野ざらしよりましだろう。
ふもとではパラついたものの、雨は降っていないのが幸い。
と、下から光が上がってきた。
さきほど抜かしたサクさんだ。
サクさんも北へエスケープするとのこと。
ならば暗い夜道。
旅は道連れ。
ライトが多い方が明るさも増す。
一緒に下りましょうよ。
サクさんは下ったところにある駅から輪行するという。
それいいですねえ。
大人の選択ですねえ。
が、ケーキさん「輪行袋持ってきてません」。
え、君今何て・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
どうりでオルトリーブのサドルバッグだけで済んだはずだ。
ま、ないものはしょうがない。
この1400メートルの土地に輪行袋が転がっているはずないし。
降りてから考えるとしましょう。
汗に濡れたジオラインを脱ぎ、着替える。
この時のために持ってきたのだ。
再び身支度を調える。
ダウンヒルのために再び雨具を着込む。
テムレスも着用。
フル装備だ。
山上だが、宿があり、暖かそうな光が灯っている。
正直、あそこで泊まって休みたい。
でも予約していないし、こんな時刻に行ってもただの不審者。
午前1時過ぎ。
さあ生きましょう。
じゃない、行きましょう。
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決死隊、真夜中の逃避行へ |
3人で走り出す。
分かれ道を過ぎて、しばらく行く。
剣山山頂への登山口があったかな。
国道438号の下り坂が始まる。
ここからだ酷道が本当の牙をむいたのは。
右へ曲がる。
左へ曲がる。
路面が悪い。
前ホイールが暴れる。
ハンドルが震える。
激しい振動が手元に伝わる。
腰を浮かして振動をいなす。
また右へ曲がる。
左へ曲がる。
右へ曲がる。
左へ曲がる。
右へ曲がる。
左へ曲がる。
ライトで照らされる限られた視界の中に、同じ風景が繰り返される。
また同じ景色。
同じリズム。
いつまでも終わらない奈落への下り坂。
曲がっても曲がっても続くカーブ。
わしは無限ループの中に入ったのか。
永遠に続くとも思われる時間。
時折、高度に目をやるが、全然減らない。
本当に下りているのか。
手が疲れてきた。
ずっとブレーキを握っているので、握力が続かない。
ケーキさんとサクさんに合図して止まる。
眠気もあるし。
サドルにまたがったまま、ひと息入れる。
「2,3キロごとに休みますので」
DNFしたので時間は気にしなくていいしね。
二人に伝える。
また下りが始まる。
同じ風景のリピートかと思いきや、時折、シカの姿が浮かび上がる。
わしらに驚いたのか、慌てた様子で斜面を駆け上がっていく。
飛び出してくるなよ~
内心祈りながらそばを通る。
当たったら、そこで終わりじゃよ。
幸い道路上に飛び出してくることはなかった。
眠気覚ましに声を上げる。
「段差!」とか「石ころ!」とか。
少しましになる。
後方のためというよりか、自分のために。
これを10回近く延々と延々と繰り返す。
途方もない作業。
ようやく標高が下がってきた。
まったく信じられない下り坂だ。
四国半端ないって(流行語)
下り始めてから2時間近く経過した。
1.5車線だった道も多少はましな広さになっている。
午前3時半過ぎ。
トンネルがあった。
歩道が結構広い。
もう耐えられない。
スローダウンして、自転車を止める。
「休みましょう」
ケーキさんとサクさんに伝える。
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明るく乾いた素敵な歩道に退避 |
乾燥したトンネルなので、直接横になっても問題ない。
気を失う。
・・・・・
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気を失うケーキさん |
20分ほど休んだか。
STRAVAのログを見返すと、山頂から約25キロ。
306キロ、標高250メートルの地点だったようだ。
また走り出す。
右手に自販機発見。
ドリンク休憩。
温かい飲み物が染みる。
また走り出す。
左手に渓流。
斜度はそれほどでもなくなった。
おや、後ろの二人が止まっている。
確か、ケーキさんのボトルケージが外れたのではなかったか。
暗闇で手さぐりで修理するがうまくできない。
どうやら根元からボキっといったらしい。
路面の振動が激しかったせいだろう。
ほんま酷道、半端ない。
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修理するケーキさん。携帯工具なので締めにくい |
トンネルから小一時間下っただろうか。
ようやく坂が終わった。
午前4時過ぎ。
家々の明かりが見えてきた。
人里だ。
生きて帰れた。
安堵する。
川の流れも緩やかになってきた。
橋を渡る。
右手に線路がある。
町がある。
駅への看板を見つけた。
午前4時過ぎ。
須波から317キロ。
JR徳島線の貞光駅に到着したのだった。
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文明への入口。ただしサクさんだけ |
まだつづく。
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