2017年6月4日日曜日

BRM503広島 須波・太平洋600キロ その8

午前4時25分。
333.95キロ地点のPC5、ローソン仁淀川町大崎店に到着した。
締め切りは午前5時16分なので、貯金は49分。
休んだのでしょうがないとはいえ、厳しくなってきた。

ようやく到着
店舗前にはランドヌール、ランドヌーズが一服している。
お疲れさまです。
ここまで走ってきたみんな。
さすがです。
ランドヌーズさんはわしらを途中追い抜いたらしく、「スーパーに寄られていましたよね~」なんて話を。
なんでも寄り道して早明浦ダムのダムカードをもらってきたとか。すごいなあ。
キューシートによると、ここから先は店舗が極端に減るという。
そう。いよいよヤマ場に入る。
文字通り山場である。
これからのコースね。

次のPC6は約100キロ先の430キロ地点にある。
愛媛県久万高原町だ。
午前11時40分が締め切りだ。
今からなら約7時間かけて約100キロ進めばいい。
平均時速14.3キロといったところ。
ただし、その間は山岳地帯。
コース図によると、700メートル級、500メートル級、600メートル級の三つの峠が待ち構えている。
実に厳しい。
時速15キロメートルのブルベスピードなら間に合うのだけど、山では速度落ちるしなあ。
着実に進むしかないわな。
PC間の距離が長いので、取り戻せるかもしれんし。

よっこらしょ。かがむのも一苦労ですわ
午前4時50分頃に走り出す。
ちょうど出ようとした時に、AJ広島の新副代表となった大先生がやってきた。
あれ?えらいゆっくり。
どうやら高知で投宿して仮眠を取っていたらしい。
すごいな。余裕だ。
わしもかくありたい。

では行きますか。
国道33号を仁淀川の上流に向かって進む。
7キロほど走ると国道439号との分かれがある。
普通に33号を西へ走ると楽なのだけど、われわれのコースはあえて南下する439号へと向かう。
小雨が降り出した。
そこまでひどい雨ではないが、路面が濡れてきたのがいただけない。
ストクルは羽織っているが、レインパンツをはくほどではない。

橋を渡って、いよいよ酷道ヨサクである。
ただ今のところ道はいい。
じわじわとした上りが続く。
だんだん夜が明けて、周囲が明るくなってきた。


集落は川沿いの斜面にへばりつくようにある。
よくこんなところに家を建てたものだとつくづく感心する。
川の落差が増してきた。
道の斜度もじわじわと上がっていく。

第一の峠が矢筈トンネル。
約750メートル地点にあるので、PC5から約600メートル以上上る。
なかなかの坂だ。

ヨサクさんはきっちり2車線あって、非常に走りやすい。
酷道でなく国道認定。
これなら問題ない。
時折、トンネルを抜ける。
ケーキさんが眠気を訴えている。
眠気は事故のもと。
いい場所があったら休みますか。
トンネルとかでもいいですね~。

と、思っていたら、道が狭くなってきた。
え?
じわじわときつい坂になる。
え?
eTrexを見ると、九十九折の坂が続いている。
え?
休めるとこなぞない。
え?
ケーキさんには申し訳ないが行くところまで行くしかない。
しょうがない。

午前6時を過ぎた。
時速10キロ以下でのたのたと坂を這いずりあがる。
高度が上がるにつれ、気温は10度以下に下がっているのだが、寒さは感じない。
それより、しんどい。
ひたすらしんどい。

ぐにゃぐにゃの道(^-^;
こんな山奥でも民家はある。
畑もある。
だけども休めるような場所は一切ない。
小雨がしとしとと降っているので、道は濡れたまま。
ほんまもんの坂に差し掛かると、ストクルを脱がないと暑くてたまらない。


坂は終わらない。
進行方向を仰ぎ見る。
はるか急斜面の上に道が走っている。
そうか。あそこまで上らんといけんのじゃ。
まじか。
挫けそうになる心を自ら支える。
とはいうもののしんどいものはしんどい。
ケーキさん少し休みませんか。

坂の途中だけど止まる。
補給用のお菓子を口にする。
ドライフルーツとナッツの組み合わせ、いわゆるトレイルミックスってやつね。

モンベルのフロントバッグに投げ込んでいたむすびも食べる。

女性の参加者がするすると抜いていった。
すごいな。
副代表も脚をくるくる回しながら抜いていった。
すごいな。
それぞれしんどいのかもしれないけど、わしたちには楽そうに見える。

さ、もうひと踏ん張りしましょう。
針葉樹林の中を通る九十九折の道をひたすら上る。
ったく、いつ終わるんだ?
空がちょっぴり近づいてきたのが救いだけど。
そして午前7時前。
ようやくピークのトンネルが見えた。
見えた!

矢筈トンネルである。
国道439号、たしかに酷道ヨサクでしたわ。

歩道もない、昭和クオリティのトンネルなので、中で休めるはずもない。
なのでしょうがなく進む。


トンネルの出口でストクルを羽織る。
しばらくは下り坂だからだ。
キューシートによると、工事中の場所もあり、走りにくいとか。
走り出す。
道は相変わらず狭いまま。
空は相変わらず曇り空。
山には霧がかかっている。
スピードが出せない。
慎重に下るしかない。
工事中の区間に差し掛かる。
ダート区間もある。
谷筋の道を、ひたすら我慢しながら下る。
折角の下りなのに、速度を稼げない。
出せて時速30キロ。
忍耐の時間だ。
山の深い四国は下り坂が鬼門だ。

ようやく道が2車線に広がった。
少し気が楽になる。
ヨサクはまさに酷道の二つ名にふさわしい厳しさであった。
与作は木を切るが、ヨサクは気を折る。
へいへいほ~である。
ボロボロである。

と、後ろを走るケーキさんの様子が変だ。
危うく寝落ちしそうになったらしい。
これは危険だ。
休みを先延ばしにしていたツケだ。
一刻も早く休める場所を探さないと。
と、道端にこの辺の集落の農産物集荷ポイントらしい小屋があった。
軒先はかろうじて濡れてなさそう。
ともかく休みましょう。
腰を下ろす。
気を失うケーキさん。

気を失う人がいる。
わしも目をつぶって休む。
暗転。

10分たたぬうちに再起動。
少しは眠気が飛んでくれたか。
走り出す。

標高370メートルまで約400メートル下り、再び上りに差し掛かる。
標高約570メートル地点にある風早トンネルへの上りだ。
ここへの上りは思ったほどではなかった。
小雨が降っていたので、ストクルを羽織ったまま。
が、上りの途中で暑くなってきて、ストクルを脱いだのだけど、まもなくトンネルの入り口がやってきたのだった。
風早トンネルさん

ストクルを羽織って坂を下る。

脱いだり着たりせわしいない。
午前8時31分、383キロ地点。
梼原の通過チェックに到着した。
郵便局の前で証拠写真をパチリ。

郵便局なう。
この檮原という町、どうやらまちづくりに力を入れているようで、非常に雰囲気がいいらしい。
ゆっくり見ている暇は当然ないので、先へ進む。
国道440号線は2車線の整備された道路。
これを次のピークである地芳トンネルまで、10キロ以上上っていく。

歩道が広い。
カタツムリのようなオヤジ二人は歩道をゆっくりと進んでいく。
脚をくるくる回して、ゆっくりと。ゆっくりと。

左手に店舗がある。
どうやらうどん屋さんらしく、ランドヌールのバイクが止まっていた。
んが、わしらはわき目もふらず、進み続けた。
そして、ようやく三つ目のピーク、地芳トンネルにたどり着いたのだった。
ガーミン読みで標高約610メートルといったところ。
そしてEDGEでの積算距離が400キロに達した。
ようやく道程の3分の2を消化したのだった。
あと200キロ。
時刻は午前9時半。
次のPCまで約30キロ。
締切まで約2時間。
ブルべスピードなら間に合う。

トンネルは高知県と愛媛県の県境をまたいでいる。
比較的新しめなので、左側には大きめの歩道がついている。
車道もゆとりがあるつくりなのだが、大事を取り歩道を行くことにする。
トンネル内の照明が明るいのも助かる。

ただ、時折走ってくるバイク部隊の排気音がものすごい。
トンネル内に反響して、ゴゴゴゴとジョジョ顔負けの効果音でうなりあげる。
歩道を慎重に進む。
当初はゆるやかな上りだったが、途中から下りになってきた。
車の切れ目を見計らって、ウノさんを止め、車道に降ろす。
車道との段差がけっこうあるので、よいしょって感じである。

走り出す。快調快調♪
ケーキさんは歩道を行く。
トンネルの中ほどで愛媛県に入った。
左手の歩道の幅が狭くなった!
え、なんで?
同じトンネルなのに、愛媛県と高知県側で設計が違うの?
愛媛の方が予算なかったのか?
てなことを考えていると、歩道の広さはまた元に戻った。
でも、愛媛側の歩道のほうが全体的に走りにくそうだったなあ。

トンネルを抜けた。
ここから今回のコースで、もっともしんどいダウンヒルが始まるのだった。

眼前に広がる愛媛県の山々。
天候は以前、曇り時々雨って感じ。
路面もウエット基調だった気がする。
谷は深い。
道は山肌をへばりつくように、うねりながら下っていく。
ブレーキは常に軽く握って、シューをリムに当てている状態。
リムが濡れていると、制動力が低下するから。

この区間、申し訳ないほどに写真がない。撮る余裕がない。
濡れた路面での果てしなく思えるダウンヒル。
広島県ブランドのミニベロ「NAGI」に乗るランドヌールさんと足が合う。
3人一緒になって、山道を走っていた気がする。

409.4キロ地点、標高550メートル。
ここから標高差250メートルのダウンヒルが始まった。
わしはここからの12分間、まったくペダルを回していない。
重力に身を任せているだけである。
深い谷だ。
はるか下に集落が見える。
あそこまで下るのか。

トンネルに入る。
斜度は5~6%あったと思う。
それがトンネルの中でゆるやかにカーブしている。
時折、車が追い抜いていく。
気を張らないと。
時速は20~30キロぐらいで決して速くはない。
でも、気を遣う。
細心の注意を払って、下っていく。

二つ目のトンネルを抜けた。
わずか6キロで300メートルまで下る。
疲れた。
ブレーキを握る手がそう言っている。
ここの下りは本当にしんどかった。
下りはミスが許されない。
ずっと気を張っている。
下るぐらいなら、坂をずっと上ったほうが楽だ。

そんなことを思ったりもした。
415キロ地点、標高290メートルまで下った。
国道33号に合流する。
時刻は午前10時6分。
PC6まで20キロだ。
ここから先は緩やかな上りが続くはず。
締め切りまで約1時間半。

時速20キロをキープすれば30分ほど余裕を残して間に合うはずだ。
しかし何があるかわからない。
ケーキさんにここからが正念場であることを伝える。
できるだけ時速20キロを保って走ろう。
そうすれば間に合う。
ここが頑張りどころだ。

面河川沿いの緩やかな上り。
時速20キロ前後で進んでいく。
気が付かなかったけど、この北上する区間、追い風が吹いていたらしい。
だからペダルが軽かったんだ。
逆風はすぐ分かるけど、順風は案外分からないもの。
人生もそんなもんかな。

後ろを振り向く。
ケーキさんが離れそうになっている。
ペダルを緩める。
頑張ろう。
頑張ろう。

そして谷間が終わった。
空が広くなった。
久万高原町の街に入ったようだ。
右手にコンビニが見えた。
ローソンだ。
着いた。
午前11時12分。
430キロ地点、PC7のサークルK久万大谷店。
締め切りの11時40分まで、貯金はわずか28分。
でも間に合った。
やり遂げたよ。


つづく。

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