極楽寺山に神を見た

盛夏の訪れを感じさせる、ある日。

わしは極楽寺山で、神を見た。

極楽だから仏と言われるかもしれんが、いや、あれは青い神ぢゃった。

そう。青い彗星ぢゃった。

とある日、相棒ken2さんから「たっかんさん、三次からネ申さんこと青い彗星さんが来るんですよ。極楽寺山に一緒に上りませんか？返り討ちにしましょうよ」とのオファーを受けた。

青い彗星さんと言えば、石見グランフォンドで一緒に走ったり、県北ライドでニアミスをしたり、八丁堀の居酒屋で一緒に飲んだりした三次のナイスガイではないか。

もちろん大歓迎だ。

青い彗星さん、石見の時は体調不良だったものの、そのスレンダーなボディから繰り出されるクライミングパワーは素晴らしいと聞く。

わしも石見200キロを完走して、一皮向けた男だ。

いっちょ、迎撃してみますか！

11時に廿日市集合なので、10時15分には自宅を出発する。

もちろんMCRジャージだ。

上だけだが、盛装で歓迎しないとね。

いつもの道を走っていると、五日市付近で前方に白っぽいTBCジャージが。

おや、ken2さんぢゃ、あーりませんか。

なんでも極楽寺山の裏にあるアルカディアに車を止めてきたとのこと。

集合場所に素直に車を止めればいいのに、遠回りしてくるという発想が素晴らしい。

時間通りに集合場所に到着した。

青い彗星さん、颯爽と登場！
すでに周囲を走ってアップを済ませてきた模様だ。

エネルギーチャージするken2さん。

最近は補給に気を使うようになってきた。

出発地点まで移動し、いざスタート。

って、青い彗星さん、いきなり軽やかなダンシングで、ひょいひょいと走っていく。

ちょ、ちょっ。

おお～～い。どこ行くんですか～～。

つ、通常の3倍の速度です！

青い背中がだんだんと小さくなり、曲がり角の向こうに消えていく。

あっという間にちぎられてしまった。

全く、どんなエンジン積んでいるのか。

モノが違いすぎるよ。

こうなれば、わしは淡々とペダルを回すだけ。

無理をしてもついていけないし、そんな体力がないことはよく知っている。

気持ちのギアを切り替えて、目の前の坂のことだけを考えよう。

山陽道を過ぎたあたりから、坂は徐々にきつくなる。

最近、坂に目覚めたken2さん。

ディープをはいていながら快調に上っていく。

くそー、石見の時はあんなにヘロヘロで、わしの方が速かったのに、この違いはなんですか。

ま、もともと短距離のヒルクライムではken2さんのほうが速いのだけど。

おれは彼のように出し切ることはできないし、脚質も違うし、しょうがないよね。

ループを終わり、特養を過ぎる。

坂は一段ときつくなる。

ken2さんの姿ももう見えない。

完全に自分との戦いになってしまった。

インローに落として、淡々とペダルにトルクをかけていく。

サイコンに表示される時速はもちろんヒト桁。

情けないが、これがわしの実力だ。

一皮向けた、といい気になっていてもこんなもんだ。

山頂への九十九折を一つ一つこなしていく。

この堰堤をすぎると、もう少しのはずだよなあ。

二人とももうゴールしたかなあ。

してるだろうなあ。

そんなことを考えながらじわじわと上る。

暑い。

真夏のようだ。

ボトルに手を伸ばす回数が増える。

そういや青い彗星さん、ボトルを忘れて、背中にペットボトルを入れていたよなあ。

途中で水分補給しないとか言ってたけど、すげえなあ。

時折、肌をなでる風が心地いい。

基本は南風だ。

ただクライム中はほとんど風を感じない瞬間も何回かあった。

休むダンシングもできない。

シッティングでじわじわ上るだけ。

心拍数は150台をうろうろしている。

七曲峠への三差路を過ぎ、もう一踏ん張り。

いつもなら宮島を一望できる風景がご褒美なのだが、この日は季節はずれの黄砂にかすんで、見えなかった。

着いた。ようやく着いた。

極楽寺山キャンプ場への入り口に。

青い彗星さんとken2さんも待っていてくれた。

撮影・ken2さん

青い彗星さんのビッグプーリー。

一部で話題のハンドメイド品らしい。

ペダリングが軽くなるという。

いやあ、おまちどおさまでした。

極楽寺やっぱ手ごわいわ。

息が整うのを待って、キャンプ場へ向かう。

あそこの売店こそが真のご褒美なのだ。

でも、その前に激坂が。

ここは本当にキツい。

二人はとっくに見えんし、足着こうと思ったくらいだ。

ようやく売店だ。

3月に来たときは雪が積もっていて閉店だった。

4月に来たときは桜が満開だったよなあ。

きょうはもう夏だ。

提供・ken2さん

お約束のアイス乾杯。

冷たい甘さが身に染みる。

まったりと自転車談義を。

このひと時が本当に楽しい。

青い彗星さんとは石見でのゆるい峠で一緒に走ったのだけど、「坂でも速度が落ちなかったですね。ちょっと早めのペースでみんなついていってましたね」とほめられた。

速い人からこう言われると本当にうれしい。

最近、人からほめられることないからなあ～。

ともあれ、今回のライドは終了。

ちなみにSTRAVAによると、極楽寺TT（麓から七曲分かれまでの7.1キロ、標高差471メートル）のタイムが、青い彗星さん24分33秒。ken2さん30分09秒、わし35分16秒。

彗星さんと10分以上違うじゃん。どんだけ速いのよ。

しかし彗星さんよりさらに速い22分45秒で上がる人もいるから恐ろしい。

でもわしのタイムも一応4月の前回より1分44秒縮めたのだけどなあ。

まあ、よしとしよう。

アルカディアビレッジまで下りる。

木漏れ日の道が最高に気持ちいい。

この後に仕事が控えていたため、わしとken2さんは自転車を車に積んで撤収することにした。

入浴してヒルクライムの汗を流す。

これは最高に気持ちよかった。

もう一日終了って感じだった。

彗星さんは時間待ちの間に、さらに裏極楽を回ってきた。
タフやなあ。

キャンプ場入り口まで、彗星さんを見送ってお別れ。

わしたちは車だが、伴走するとその速さを実感できる。

コンパクトデジカメなので、ピントは合っていないが(^_^;)

体重が54キロというから、わしよりも軽い。

ほんとに軽々と上っていく。

今度はもう少し同じ空気をすえるように頑張ります！

彗星さん、ken2さんありがとうございました。