別府温泉を初めて訪れるのに、温泉に入らないなんて意味が分からないよ。
そうつぶやいたら、BRM1017徳山-竹田津400キロの途中に、温泉に入ることになりました。
温泉です |
どうも、たっかんです。
徳山~竹田津のフェリー利用ワンウェイブルべも今年で3回目。当初は6月に予定されていたが、新型コロナのせいで延期に。満を持しての出走だ。
午前7時前、雨の徳山港に集合。ここでサイボーグ修行僧の異名でおなじみ、AJ広島のスタッフでもある、ツネちゃんから提案が。
「御仏のお導きです。拙僧についてくれば、別府でお湯に浸れるであろう」。
ケーキさんと我、ともに迷える50過ぎのオヤジ二人としては是非もなく、ただただ導きに従うばかり。
「271キロ地点の宇佐までに3時間の貯金があれば、その願いはかなうだろう」。
貧脚オヤジとすれば「ホンマかいな」と疑い半分信じたい気持ち半分で、付き従ったのであった。
徳山港で雨のブリーフィング |
深夜から降り続いていた雨は、山口市への関門となる荷卸峠を抜けるころには止み、青空がのぞくように。
小郡から二本木峠を越え、美祢市に入ったころには、絶好のサイクリング日和となった。
右手奥に仁保名物のパラボラアンテナ |
今回はコロナ下のニューノーマル(N2)BRMということで、接触機会削減のために、PCはフォトチェック(PC)でOKだ。
PCごとの制限時間が設定されていない。
午後2時に129キロ地点のPC3、角島大橋に到着。山口県のほぼ西端である。
ブルべで何回も来たことあるのだが、不幸にも夕方から夜間しか来たことなかったので、海の青さに癒される。そんな気がする。
この時点で1時間半の貯金。ワシ的には満足である。
角島大橋 |
玄界灘に沈みゆく太陽を右手に下関市へと進む。追い風に押されてペダルが軽い。
PC4、181キロ地点のファミリーマート下関あるかぽーと店に午後4時46分に到着。貯金は2時間22分に!実に素晴らしい。
と、思っていたのだが、ツネちゃん敵にはやや不満だったようだ。すまんのう。貧脚で。
下関へ快走 |
連絡船で関門海峡を渡り、九州ステージへ。過去2回は関門トンネルだったので初めてだ。門司港駅前から再出発。山を越えて新門司方面へ向かう。ここら辺で日没。ここからは夜道が続く。
下関に陽が沈む |
デッキで待機するわれわれ |
長い連絡橋を越えて北九州空港へ。午後7時4分に212キロ地点のPC5、北九州空港玄関のメーテルぅのマンホールに再会。貯金は2時間ちょっと。渡船があったし、街中の信号峠で稼げていない。
さあ行くんだ |
ここで衝撃の事実判明。これまで連絡橋は歩道を通っていたのだが、実は自転車通行OKだったという。ガーン。橋を引き返す直前に知ったのだった。とはいうものの、安全面を慮って歩道で引き返す。歩道を下りたところで、GiantWishさんがパンク修理中。ツネちゃん、ケーキさんとともにサポートする。夜間はライト当ててもらうだけで助かるのよね。
夜のパンク修理 |
次のPCは271キロ地点の宇佐。目標3時間の貯金を稼ぎ出せるのか。ここからツネちゃんの鬼引きが始まった。ほぼ平坦の国道10号を宇佐方面へ。数人がパックになって夜の道を駆け抜ける。速い速い。そして実にきつい。大丈夫か、わしら。
頼もしい後ろ姿 |
午後10時11分、271キロ地点のPC6のセブンイレブン宇佐順風新田店に到着。想定締め切り時間が午前1時8分なので、3時間は無理だったが、ほぼほぼ3時間の貯金ができた。ツネちゃん有言実行。さすがサイボーグだ。「後は自力で頑張って」とエールをもらい、ツネちゃんとはここでお別れだ。こちらこそお世話になりました。本当にありがとう。
コンビニで補給。ツネちゃんありがとう |
ここからは国東半島の根元を南下し、山を越え別府に入る道のりだ。緩い上り坂が延々と続き、速度が全く上がらない。どうやら脚は屍のようだ。田舎道は街灯もなく、ひたすら暗い。ライトだけが頼りだ。
ナイトライド満喫 |
急坂を上り詰め、安心院の町に入ると霧が出できた。安心院で「あじむ」と読む。「特牛(こっとい)」に続く今回2度目の難読地名である。安心院は盆地状になっていて、谷筋に霧がよく発生するらしい。霧の細かな水滴が体にまとわりつくが、宇佐で防寒用にゴア雨具を着用したのが効いている。
霧にむせぶ夜 |
292キロ地点の「里の駅」に立ち寄り、ベンチで10分ほど仮眠。屋根があるので、野宿よりも少しだけましだった。
上り坂は延々と続く。日付が変わって18日午前0時52分、300キロ地点を通過した。貯金は減り、2時間8分。標高が上がってきたせいか、霧が切れてきた。見上げると漆黒の空に星が瞬く。山際をオリオン座がちらちらと見え隠れする。サイコンの距離が増えるペースがやたらと遅い。見るといやになるので、視線を切る。暗闇の中にも時折、人家があり、そんな場所では季節柄、キンモクセイの芳香が漂う。今回のBRMでよくかいだ香りだ。
300キロ経過。あと100キロ |
標高は500メートルを超え、気温はすでに一桁。稼いだ貯金を浪費して、のろのろと前進する。そしてやっと。午前1時半、306キロ地点のピーク、アフリカンサファリ入口に達した。標高550メートル、気温5度。体を動かし続けていたから、なんとか耐えられる厳しい環境だ。
後ろにゾウのオブジェがあった |
あとは別府の町まで下るだけ、と思っていたが、これがさらに大変だった。PC7の十文字原展望台まで結構な上り返しが2回ほどあった。おかげで体を温められてよかったという考え方もあるけど、決して楽ではない。
午前2時前、展望台に到着した。別府湾を取り囲むように、大きな弧を描いて街の光が浮かび上がる。確かに絶景だ。深夜なのに観光客が車で次々とやってくるのも納得だ。ただ一刻も早く、別府温泉に入りたいわしらはゆっくりしている気にもなれず、そそくさと展望台を立ち去る。
日本の夜景100選も納得の絶景 |
再び下りが始まる。時折、硫黄の匂いが鼻を衝く。温泉地らしいわ。そしてさらに驚いたのが、道端の側溝から温泉のガスが吹き上がっていたこと。これは非日常の光景だ。思わず自転車を止めてしまった。
側溝から煙 |
しかし別府はすごい坂道の街なのだな。山の斜面にへばりつくように温泉街やら民家やらが点在している。もう1回上り返すと、右手の山肌に別府杉乃井ホテルの威容が。これは大きいホテルだわ。
杉乃井ホテル |
我慢のダウンヒルが続く。この時間なのに信号ストップが多いのが腹立つ。ケーキさんは眠気をこらえるために舌をかみしめていたという。
午前2時48分、325キロ地点のPC8ファミマ別府中央町店に到着。貯金は先行するランドヌールたちがくつろいでいる。わしらも手早くチェックをすませ、今回の目的地に向かう。
別府の証明 |
PCのすぐそばにある「やよいの湯」という公衆浴場である。なんと驚きの24時間営業。湯の街といえど、24時間は営業は多くない。てか調べただけで3軒だけだった。ほかの2軒はルートからちょっと外れていたが、「やよい」はほぼオンルート。これは行くしかない。
24時間営業なので空いてる |
入口は自動ドア。100円玉を入れると開く。大人200円を入れる。玄関を入って扉を開けると、そこは脱衣場兼浴室。この時間なのに先客が1人いて体を洗っていた。浴槽はぬるいのと熱いのが二つ。
左が熱い。右がぬるい |
雨具を脱ぎ、サイクルジャージを脱ぎ、ジオラインを脱ぎ、レッグカバーを脱ぎ、靴下を脱ぐ。いずれもちょっと湿気ている。香ばしい匂いを放つこいつらをまた着なければならないと思うと若干気が滅入る。
かけ湯をして浴槽に浸かる。冷え切った体が、やわらなぬくもりに包まれる。お湯の中は湯の花が舞っている。これは奇跡だ。導師ツネちゃんのおかげで身も心も極楽浄土だ。感謝感謝。
洗い場にはシャワーが二つ |
ちょっと浴槽を出る。すさまじい悪寒に襲われる。歯の根が合わない。あかん。体がまだ温まっていない。急いで湯に浸かる。じっくりと温まることしばし。ようやく体が温まった。手早く体を拭き上げ、ちょっと湿気たサイクルジャージを強靭な精神力でもって身に着けていく。着替えがあるのがベストだが、荷物が増えるので我慢我慢。40分ほど滞在したか。午前3時40分に温泉を出発した。貯金は1時間に減ったけど、心は満足していた。本当にいいお湯だった。ありがとうありがとう。
あとは竹田津までの約80キロを走ってゴールするだけの簡単なお仕事のはずだったが、ここからも長かった。眠気をこらえ、回らぬ足を動かして、国東半島を左回りに進む。多くの艱難辛苦を乗り越えたわしらは、おそらく人間的にえらく成長したはずである。
最後のPC。誰もいない |
なので、いくつかのアップダウンとトンネルを抜けて、港の風景が見えてきたときの安心感といったらなかった。ようやく終わったよ。2020年10月18日午前8時29分、403キロ地点のゴール、竹田津港に到着したのだった。
やったー! |
今回の400もしんどいブルべだった。昼夜の寒暖差にやられ、後半の山越えにやられ、終盤の80キロに苦しんだ。別府温泉での極楽タイムがなければ、怒って宴席を立っていたところだ。まったく楽なブルべはどこにもない。午前9時40分のフェリーで徳山港へ。2時間の船旅の大半は眠っていたのだった。
ガウ攻撃空母から発進! |
ともあれ鬼のけん引力を見せて、わしらに湯けむりを与えてくれたツネちゃん、本当にありがとう。いつも無理目なチームオーダーばかりで申し訳ない。そして、無事開催にこぎつけてくれたAJ広島のみなさんもありがとう。fukさんをはじめとしたスタッフのおかげで、貴重な体験を味わえました。そしてともに走ってくれたケーキさんもありがとう。次の600もケーキさんが伴走してくれていると思って四国路を走りますわ。
ランチは天一 |
まだシーズンは続いている。さあ、次はどこへ走ろうか(終わり)
ありがとう |